この記事は、ケーシーエスキャロット Advent Calendar 2025 の9日目の記事になります。
「心理的安全性は効果的らしい」
そんな情報を得て素直にその手法を導入した事例を見てみましょう。
そんな情報を得て素直にその手法を導入した事例を見てみましょう。
第2章:まほろば国の戦い
まほろば国の大将は苛立っていた。
領土拡大のために各地へ配した精鋭部隊から、勝利の知らせがなかなか届かない。
大将のもとに届く報告は、そのすべてが様式美を纏い、忠義を尽くす書状ばかりであったが、戦況の改善には繋がっていなかった。
奇妙なことに、それぞれの陣はどこもかしこも洗練されていた。軍議はいつも静寂に満ちていた。大将の命に背かぬ戦略であるか、戦うことに大義があるか、褒美の配分は妥当か、戦況報告に粗相がないか、一つひとつ丹念に吟味されていた。
軍議の場は神聖であるとして、刀は持ち込まず少し離れた床几に立てかけてある。
ただし、いつでも出陣できるように、全員が鎧兜を身に着けていた。
それはまるで「慎重」と「即応性」の絶妙な折衷を体現するかのような姿だった。
しかし、陣の洗練ぶりとは裏腹に、戦況は一向に好転しない。
そのときである。
ひとりの若い侍が、この膠着を破る重要な事柄について、震える声で言上した。
「おそれながら……数年前、ググール国の優れた戦略家が残したという戦術書が、密かにこの国にも伝わっておりました。それがここに」
聞けば、その戦術書を取り入れた部隊は驚異的な戦果を挙げたという。将軍はその効果の絶大さに瞠目した。
「すべての隊に、この“心理的安全性”なる戦略を導入せよ!」
その日を境に、各部隊の様子は一変した。
形式を重んじて揃いの鎧兜に身を包んだ者たちは、将軍の命に従い、盾をも装備することになった。
しかも、なぜか両手にひとつずつ……。
最初はどの陣も戸惑いの色を隠せなかったが、将軍の命に背くものは一人もおらず、新たな形式として受け入れた。
盾を持つ角度まで統一して士気を高めながら軍議に臨む。すると、軍議の雰囲気は急速に変わっていった。
熟練の者の指図を一言も漏らさず聞き取る姿勢だった若い者は、いつしか積極的に声を発するようになっていた。
さらには、自らの戦場経験を生かした策をたった一言で厳かに伝えていた者も、いまや笑顔で若い者の意見に耳を傾けている。
「それにしても、この盾……両手にひとつずつ持つものなのでしょうか?」
「いや、わしも初めてじゃが、とにかく絶大な安心感よ。このまま眠れそうなほどじゃ」
「眠られては困りますよ!」
「じゃが、拳骨が飛んでくることもあるまいよ」
「たしかに。みな、両手が塞がっておりますからね」
笑いが起こる。
「いや、わしも初めてじゃが、とにかく絶大な安心感よ。このまま眠れそうなほどじゃ」
「眠られては困りますよ!」
「じゃが、拳骨が飛んでくることもあるまいよ」
「たしかに。みな、両手が塞がっておりますからね」
笑いが起こる。
別の隊でも似たような会話が交わされていた。
「あの、この軍議の記録をつけたいのですが、両手が塞がってしまって……」
「わしも身動きが取れぬのだが、皆が動けぬとなれば、これはこれで安心よな」
「なんと申しますか、“平等”というものを肌で感じますな」
「うむうむ、実によろしい」
「あの、この軍議の記録をつけたいのですが、両手が塞がってしまって……」
「わしも身動きが取れぬのだが、皆が動けぬとなれば、これはこれで安心よな」
「なんと申しますか、“平等”というものを肌で感じますな」
「うむうむ、実によろしい」
軍議の場には、かつてないほどの安堵と笑い声が満ち、夜が更けてもなお語りは尽きなかった。
そして翌朝──
大将のもとに届いた報告書には、どの隊も戦に出る前から満足げに、
「本日も軍議、大いに進捗あり」
「誤解なき発言多数、討議の安全確保」
「隊員一同、これ以上ないほど安心」
「“心理的安全性”の効果は絶大なり」
などと綴られていた。
大将のもとに届いた報告書には、どの隊も戦に出る前から満足げに、
「本日も軍議、大いに進捗あり」
「誤解なき発言多数、討議の安全確保」
「隊員一同、これ以上ないほど安心」
「“心理的安全性”の効果は絶大なり」
などと綴られていた。
やがて大将の思いは実り、まほろば国は親交を深めることになった。
ある夜、大将はしばらく報告書を見つめたのち、ゆっくりと額に手を当てた。
──なぜ、戦に出ぬのだ。
なんか安全になりました、という「ぬるい組織」を作るのが目的になってしまう例です。心理的安全性という言葉に引きづられて、意味を履き違えてしまったということで、結構よくみられる勘違いです。
自身や組織にとってリスクのある事柄でも、躊躇せずに発言できると思える環境が「効果的なチーム」を作る、というのが google の研究結果です。リンク先の google の記事を読んでいただければ、決して「ぬるい組織」を目指していないことがわかります。
「効果的なチームとは何か」を知る
「効果的なチームとは何か」を知る
それに対して、間違った解釈でぬるい組織をつくる方向に解説している記事が結構あります。幸いなことに、世の中にはこの誤りを指摘する記事もたくさんあります。さらには間違いを指摘するだけではなく、きちんと日本にカスタマイズした手段を提示している記事まであります。
なのですが、、、
私のモヤモヤはこの先にあります。日本にカスタマイズしたやり方で心理的安全性を高めたら、本当に google の言う「効果的なチーム」になるだろうかと。次章、あしはら国の物語。
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